SPEAK/24

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2024/4/25 18:54 +Thu+
椿ノ恋文/小川糸

「ツバキ文具店」「キラキラ共和国」に続く、シリーズ第3作。

このシリーズ読んだあとの率直な感想は毎回、「鎌倉に行きたい」です。笑
舞台となっている鎌倉の観光名所やお店やグルメなどが、具体的な名称とともに登場するから、ゆったり鎌倉散策をしてみたくなる。

そしてやはり何と言っても主人公・鳩子の「代書」の仕事が物語のメインなのだけど、今回はそれにプラスして、亡くなった先代(鳩子の祖母・かし子)が長らく「恋文」をやり取りをしていた男性の甥が鳩子の元を訪れて…というのが物語の大筋となっている。
情熱的なやり取りの「恋文」たちを、供養するために鳩子は奔走する。

「結局残るのは、デジタルより紙」みたいな鳩子の言葉があるのだけど、確かに、昔の文豪が書いた手紙やノートなどがいまだに発掘されることがたまにあるのを見ると、紙媒体は強い、と思う。
私も昔から手紙を書くのは好きなので今でも書くことはけっこうあるし、もらうこともけっこうある。メールやLINEも嬉しいのだけど、手紙をもらった時の嬉しさは種類が少し違う。
こういう小説を読むと、取っておくことは少しためらうのだけど(笑)でも捨てられなくて取ってある。何なら、学生時代の授業中に友だちとやり取りした手紙も取ってある。

話が少し逸れたけど、本当に伝えたいこと、逆に伝えづらいこと、未来のために残しておきたいこと、を自分ではなかなか書けないから代書してもらいたいと、人々は鳩子の元を訪れる。
余命わずかな母親が結婚が決まった娘に宛てた手紙や、同性愛者である男性が両親にカミングアウトをする手紙、あと今回は変わり種として、企業に対する宣伝の手紙(破格のギャラ!)などが登場。
つくりは1、2作目と同じで実際鳩子が書いた手紙が差し挟まれるので、使った便箋、書くために使った文具の違い、字体の違い、なども楽しめる。

ミツローさんと結婚して、ミツローさんの連れ子であるQPちゃんの下に第2子第3子を出産し、生活環境もがらりと変わった鳩子の日常も描かれている。
反抗期真っ盛りの中学生になったQPちゃんとの関係性に悩む鳩子の葛藤も描かれるので、終盤、QPちゃんから鳩子に贈られる手紙のくだりでは涙が溢れてしまった。

NHKで放送していたこのドラマ好きだったけど、亡くなったり色々あって出なくなったりのキャストが数人いるし、続編は無理なのかな。NHKがめちゃくちゃ好みそうなコンテンツなのにもったいない。笑

今回もバーバラ婦人の言葉がとてもよかった。
「男はあくまで嗜好品。必需品にしちゃダメよ」とか、人生を遊園地にたとえたくだりとか。
こういう言葉たちを拾い上げるのが好きで私は本を読むんだな、ということを改めて思った。



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