相変わらずの遅いアナウンスですが、1/24に開催されます、おそ松さんオンリーイベント『家宝は寝て松』にサークル参加します!
スペース:東6ホール ぎ36b(山本清)
無配小説
『とある六つ子の超能力』
もしも六つ子が超能力を使えたらなパロディ本。
追記にサンプルを載せておきます。
後は相方たちの漫画とポストカードが置いてあります。
テイルズも少しだけ置いてあるので、よろしければどうぞ。
では明日はよろしくお願いします!
これはどこにでもある普通の街の、普通の家に住んでいる少し普通じゃない六つ子のお話。
ガタンッ!バンッ!ドタドタドタドタ
「ん?」
時刻は午後二時。
昼食を食べ終え、居間の卓袱台に競馬新聞を広げていたこの家の長男おそ松は二階から聞こえる激しい物音に首を傾げる。
同じ様に居間の片隅で猫と戯れていた四男一松も物音がする二階へと目を向けると、今度は慌しく階段を下りる音が続き、次いで居間の襖が勢いよく開かれた。
「トド松?」
「・・・そんなにあわててどうしたの?」
現れたのは末っ子のトド松。
未だパジャマ姿の彼は他の兄弟たちが起床していく中全く起きる気配がなく、今の今まで寝ていたのであった。
「じゅ、十四松兄さんは?」
「十四松ならカラ松と一緒に出かけたぞ」
焦った様子でこの家の五男である十四松の行方を聞くトド松は返ってきたその言葉に膝から崩れ落ちる。
十四松は昼食を食べ終えて早々、次男のカラ松を誘いどこかへ出かけていた。
一体何をそんなに慌てているのかおそ松が声をかけようとすると、トド松が小さな声でポツリと呟いた。
「・・はつ・・・う」
「ん?」
余りにも小さい声であった為聞きとることができなかったおそ松が聞き返すと今度は勢いよく顔を上げ大声で言い放った。
「十四松兄さんが爆発しちゃう!」
さて、ここで普段なら「何言ってんだこいつ?」「まだ寝ぼけてんのか?」と言ってさして相手にもせず再び自分の世界に戻って行く兄弟たちだが、今回は慌てて言ってきた人物がトド松であることが問題であった。
「・・・夢、見たの?」
居間の隅っこにいた一松が立ち上がりトド松の側まで来るとそう尋ねる。
その言葉にトド松は何も言わずコクリと頷いた。
「それってリア充的な方ってことはないか?」
「ううん・・・アレは物理的にパーンって飛び散る感じだった」
おそ松の冗談交じりの言葉にも力なく答えるトド松に、おそ松はマジか〜と言いながら深い溜め息を吐き、一松はトド松を慰めるように背中を撫でた。
さてここで話は変わるが、この六つ子について少し紹介しておきたいことがある。
六つ子という時点でなかなか珍しい兄弟ではあるが、もうひとつこの六つ子には普通の人とは違う特別なところがあった。
それは先ほど一松が『夢』と言ったことが関係するのだが、実は末っ子であるトド松は未来を予測する夢、『予知夢』を見ることができるのだ。そしてトド松に限らず六つ子全員が何らかの特殊な能力を持っていた。
両親は至って普通の人間で、何か変な薬を飲んだとか怪しい組織の実験体になったことがある、ということは無いのだが、思春期を迎える頃には全員がそれぞれの能力に目覚めていた。そして最初の頃は力の制御が難しく色々と苦労していたが徐々に力の使い方が上達していき、今では六人とも自分の能力と上手く付き合っていた。
それぞれの能力については追々説明していくとして、こうして能力を使いこなせるようになって行く中で、六つ子の中でも未だに他の兄弟に比べ力の使い方が不安定なのがトド松である。
元々、『夢』という不明瞭なものである為か、それこそ能力が目覚めた頃はそれが予知夢とは気づかず、夢と同じことが起こってもトド松は正夢ってあるんだなくらいに思っていた。そして兄弟たちが能力に目覚めていく中で自分の能力が予知夢だと気づいたのだが、やはり夢というのは曖昧でしっかり誰に何が起こるかわかる時もあれば、抽象的で一体何を伝えたいのかわからない時もある。更に予知夢とそうではない夢の違いもわからないので、それこそ夢のことを考えすぎて軽いノイローゼになっていた時期もあった。
それでも少しずつ夢をコントロールできるようになっていき、今では普通の夢と予知夢の違いがわかる上に、身近な人間であれば例え夢の中で姿形が変わっていても一体誰なのか判別できるようになっていた。
それでも不安定な部分は多く、例えば以前おそ松が「宝くじの番号を予知してよ」と言って来た時は、早速予知できないか試したが失敗に終わり、その後も何度かチャレンジしたが自ら予知したい夢の内容を見ることはできなかった。そして以前よりも夢の精度が上がったとはいえ、やはり細かく何が起こるのかわかる夢といまいち何が起こるのかわからない夢があり、今回トド松が見たのはどうやら後者の様であった。
おそ松と一松がようやく落ち着いてきたトド松の話を詳しく聞くと今回の夢にストーリー性は無く、黄色い花びらの可愛らしい花がふわふわと宙を漂っており、トド松はソレを綺麗だなと見つめていた。しかしその花はどんどんトド松の目線から離れていったかと思うと突然、ドーンッ!と大きな音をたて爆発し、その綺麗な花びらを散らせたのだった。
そこまで見て飛び起きたトド松だが、すぐに今のは予知夢であると確信すると、六つ子の中で黄色をトレードカラーとしている一つ上の兄が頭を過ぎる。
「夢に出てきた黄色い花は十四松兄さんを見立ててたんだ。それが突然爆発なんて・・・きっと兄さんの身に何か起きるんだよ!」
たくさんいる兄弟の中でも特に十四松を贔屓しているところのあるトド松は大好きな兄の身に起こる最悪な出来事を想像し再び瞳を潤ませる。そしてそんな弟を安心させるようにおそ松はトド松の頭を撫でた。
「落ち着けトド松。大丈夫、十四松の奴がそう簡単にくたばる訳ないだろ。それにカラ松も一緒だしな。あれでいて頼りになるところもあるし、あいつらの能力なら何か危険があってもすぐに気づけるだろ」
ニイッと歯を見せて笑うおそ松にポカンと口を開けていたトド松だが、プッと吹き出した。
「おそ松兄さんって本当たまに兄さんだよね」
「なんだとー俺はいつでも六つ子の頼れるお兄ちゃんだぞ」
緊張の糸が解けたのか、クスクスと笑い出すトド松の髪をおそ松がグシャグシャと掻き混ぜる。
「・・・とりあえず、連絡入れたら」
しばらくキャーキャーと戯れていた二人だがそこに一松の独り言とも取れそうな呟きが聞こえてきて揃って顔を一松に向ける。すると一松の指が玄関の方を指していることに気づいた。
玄関にある連絡を入れるもの・・・。
「「あっ」」
ピタッと動きを止めた二人の頭の中に昔懐かしの黒電話が思い浮かぶ。
無くす可能性の高い十四松と交友関係が猫くらいしかいない一松は携帯電話を持っていないが、他の兄弟は全員携帯電話を所持している。
十四松はカラ松と一緒に出かけているので、カラ松に夢のことを連絡し十四松に伝えれば何かしら対処の仕様があるかもしれないと途中で一松は気づいたのだが、ほんわかとした雰囲気で戯れ始めた二人の様子に言うタイミングを逃していたのだった。
「も〜一松兄さん!そういうことは早く言ってよ」
「いや、何か盛り上がってたし」
「よっしゃ、早く教えてやろうぜ!」
そんな簡単なことに気づかなかったのが恥ずかしいのかトド松がブツブツと一松に文句を言っている隙におそ松が携帯を取り出し、カラ松の元へ電話をかける。
これで一安心。と思ったのもつかの間、三人の耳によく聞き馴染んだメロディーが聞こえてきた。
「この音は・・・」
それはカラ松が着信音として使用しているとある外国のロックバンドの曲。音の出所を辿れば居間の隅に充電器と繋いだままのカラ松の携帯がポツンと置かれていた。
それをポカンと見つめていた三人だが、先ほどまで一松と戯れていた猫がカラ松の携帯に近づくと一松がやる気のない声で「よし」と一言呟いた。
瞬間、猫はカラ松の携帯に勢いよくじゃれつきだしみるみる内に携帯は傷だらけになっていった。
おそ松は自分の携帯のボタンを押し着信を切るとはあ〜と深いため息を吐いた。
普段は間違った方向に格好をつけイタイ発言の多いカラ松だが、それさえ無ければ兄弟思いの頼りになる男である。
しかしどこか抜けたところがある為、たまにこうしてウッカリをやらかすのであった。
「本当使えねえな、クソ松は」
「うう〜十四松にいさ〜ん」
傷だらけになったカラ松の携帯を見下ろし、悪態を吐く一松。何も良くならない状況に再び落ち込むトド松。
暗くなってしまった居間の空気にさすがのおそ松も引きつった笑みを浮かべる。
「と、取り敢えずチョロ松にも連絡して手分けして十四松を探そうぜ」
「そうだね。チョロ松兄さんの力があれば十四松兄さんを探すのも少しは楽になるし」
気を取り直して今度はチョロ松に連絡を入れる。チョロ松は朝から出かけており、どこにいるのかわからないが彼の能力があれば多少は十四松を探すのが楽になるので、少しだけトド松の気分も上がった。
「ん〜出ねえなあ」
しかし中々繋がらない電話に嫌な予感が過ぎる。
そして
『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため』
ピッ。
聞こえてきた自動音声におそ松はそっと耳から携帯を離し、通話を切る。
し〜んと静まり返る空間に未だカラ松の携帯と戯れる猫の声だけが寂しく響いていた。
「チッ」
もはや、十四松の心配よりも使えない兄たちへの怒りでトッティ化しそうな末っ子の舌打ちにおそ松は我に返ると、携帯をパーカーのポケットに突っ込み一松とトド松に向き直った。「繋がんねぇもんはしょうがない!ほれっトド松はさっさと着替えて飯食って来い!とりあえず俺たちだけで探しに行くぞ!」
おそ松のその言葉にそれもそうかとトド松は怒りを収め一松も出かける準備をする。
何とか落ち着いた場の空気におそ松はこっそり息を吐き出すと、自分も出かける準備を整えるのであった。