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はじめての おつかい (幼少AL編)





小さな足で街を闊歩する。
隣には心做しか顔を赤らめる幼馴染みの婚約者が、きゅうっと相手の手を握って楽し気に辺りを見渡していた。

「ねぇアッシュ?」
「なんだ、ナタリア。疲れたか? それならばそこのベンチで少し休もう」
「いいえ、大丈夫ですわ。ただ私達、どちらへ向かっておられるのですか?」
「何処って、義兄上に頼まれた砥石を取りに武器屋に行くのだろう?」
「アッシュ……私、こんな道通ったことありませんわ」
「……えっ?」

彼らは何度か街に降りてきた事はあるけれど、その時はいつも側に大人がいた。
いつも手を引かれて歩くだけだった。
だけど今日は2人きりの、初めてのおつかい。

5歳になったばかりのナタリアは知っている街なのに知らない街に来てしまったような感じがして、赤らんでいた顔は徐々に悲しげになっていった。

「だっ、だが地図通りに……」
「アッシュ、その地図はどなたから?」
「義兄上から、だが……」
「まぁ! お兄様は絵心が破滅的ですから地図など書けるはずありませんわ」

つまりは迷子である。
原因は“義兄上”と呼ばれ、2人におつかいを頼んだ男のせいだろう。



part1 END

ルディとオリイオ様







外では震えながら参拝に訪れた大人達とは裏腹に、子供達は積もった雪に騒がしくも遊びに耽っていた。
一方、暖かい室内では、部屋を乾燥させないようにと暖房音機関の上にやかんを置いたルディがイオンに「イオンは聖夜祭とか、そういう祭りに行事に参加したことあるか?」と聞いている最中である。
イオンはそういう行事の日は導師として民衆の前で演説し、それからはずっと部屋で書類に追われているから皆無だとフンと鼻で笑いながら書類に判子を押す作業を続けていた。
それなら丁度いいかなと、今度バチカルで聖夜祭が開かれるから、それにイオンも参加しないかということを切り出した。

「名目だけ外交としてさ、それならイオンも来れるかなって思ったわけよ。どう? アリエッタも連れて」
「……行きたい」
「じゃあ決まりな。どうしても演説しなきゃいけないってなったら演説終わってからでもいいし、いざとなったらボイコットしちゃってもいいと思うんだよね。俺だって勉強とかよくボイコットしちゃうし」
「それもどうかと思うけど、どうせ建て前だから出なくてもいいか」

日にちはいつ? イオンは最後の書類に判子を押し付けて、卓上カレンダーを捲った。


才幸会話文




呼び方


幸「六郎と筧は“さん”呼び。だが何故ワシは“おっさん”なんだ?」

才「甚八のことだって海賊のおっさんって呼んでるぜ? 今さらだろ。嫌なのか?」

幸「嫌というかだな。……改めて言っておくが!……此処ではワシが1番偉いのだぞ」

才「あー、じゃあ今度から幸村様とでも呼んでやろうか? ゆ・き・む・ら・さ・ま?」

幸「……うわぁ……」

才「ひでぇ!? おっさんが嫌だって言ったんだろ。だったら幸村さんか? あ?」

幸「……鳥肌たってきたぞ」

才「ったく、そんなに名前で呼んで欲しかったらな、布団の中でならじっくりと……」

幸「六郎、茶」

六「御意」

才「聞けよ!! ってか居たのかよ!! 小姓のくせに気配絶つな!」

幸「いやだ」

六「お断りします」

才「ガキかアンタら!……というかだな、今さらおっさんを名前呼びすんのってなんか……こう、素面で名前呼びっての、気恥ずかしいんだよ」

幸「初々しいのう」

六「初々しい? 青臭いの間違いでは」

才「よーし六郎さん、表出ろ」

六「どうぞお1人で。私は若にお茶を淹れる事に忙しいのです。見て分かりませんか? ……それだから幼稚と言われるのですよ才蔵」

才「言われたことねぇよ!」

六「おや、そうでしたか。それは失礼」

幸「六郎、煽るな。後が煩い」

六「若、煽ってはいません。本当の事を言ったまでですから」

才「やっぱ表出ろ!!」

六「そんなに戦いたいなら鎌之介にでも構ってあげたら如何です? 暇そうにしてましたから。あぁ、ほら、噂をすれば……」


アニブレ10最終話の後日談






緩んだ頬を才蔵がつねる。
よく伸びる頬だなと言いつつも、その内心は穏やかではなかった。

元凶は伊佐那海と幸村の2人にあった。

奇魂の制御を失い伊佐那海は闇に囚われ、それでも才蔵の力のお陰で無事に救出出来た――そこまでならば円満の終わりとして良かったのだが、その後が問題だった。

「いつまでニヤけてんだテメェ」
「らって、ゆきひゅらひゃまに……ぷはっ…幸村様に撫でられたし抱き締められちゃったんだよ。嬉しいんだもん! 才蔵ってば羨ましいんでしょー!」

その時の幸村は何の悪意もなかっただろう。
仲間以前に娘のように思っている少女が悲しそうなら、抱き締めて慰めてやるのが常道である。
伊佐那海にも何の悪意もなかっただろう。
不安で仕方なかったし、皆に迷惑をかけてしまったと落ち込んでいたのだ。
つまり無辜である2人に対してこうも才蔵が苛ついているの理由は、彼の幸村に対する独占欲によるものだった。
例えそれが伊佐那海であっても、六郎やアナスタシアであっても、或いは最年少の弁丸であっても同じことだろう。
もしかしたら、佐助の仲間である動物達であっても苛立っていたかも知れない。
それほどまでに才蔵の独占欲は濃く強かった。

「幸村様が抱き締めてくれたのって、アタシが初めてなんじゃない!? あっ、もちろん勇士の中でって意味でね!」
「なっ、テメェは抱き締めてもらっただけだろうが! 俺なんかな、口吸いとか閨の相手とかしたことあるんだからな」
「妄想の中で、だろ? なんでワシが男相手にそんなことせにゃならんのだ。アホか? アナなら大歓迎だがな」
「それを言うな!!」
「才蔵ってば負け惜しみに妄想言っちゃったの!?」

とはいえ、その独占欲の矢印は一方的なものだった。
そのせいで幸村からは呆れの溜め息、伊佐那海からは同情の眼差しを受ける始末だ。

「だ……大丈夫だよ才蔵っ、アタシそんな才蔵でも好きだから!」
「良かったなぁ才蔵。そんな頭の持ち主でも好いてくれる女子がおって」
「俺はオッサンに好かれてぇんだよ!」

木霊するほどに叫ぶ。どこまでも可哀想なことこの上ない男である。



腐女子伊佐那海

アニメ8話での腐女子な伊佐那海




(幸村様が、海賊のおじさんの、え? ちょっと待って、どういうことなの。ドウイウコトナノ……!)

彼女の頭の中は混乱気味だ。妄想が駆け巡る。
初めて口にした神酒以外の酒は伊佐那海の思考を悉く奪い、眠らせた。
幾らか寝たところで目を覚ましてみれば、月明かりに照らされた、自分が好意を抱いてる男が「こういう場所を求めていたのかも知れねぇな」と呟いていて、その言葉に喜んで、皆はどうしてるのかと視線を落とした。
そうしたら、まさかの事が伊佐那海の頭を破裂寸前まで追い詰める。

「た、大変っ! 幸村様、また男の人誑し込んだの…!?」

幸村が、自分達を窮地から救ってくれた男の上着に包まれて、寝ていた。

「海賊のおじさんのお友達とも仲良くなって、笑顔まで振り撒いてたし……こ、これはモブ幸!? って思ってハァハァしてたら今度は何でか海賊のおじさんの上着に包まって寝てるし! ああああ……何で私寝ちゃってたの!? どうしてあぁなったのか知りたい!! 才蔵は才蔵で気付いてないみたいだから、才蔵の見てない時に、ってことよね? 幸村様がエロいまでの策士なのは知ってるけど、まさか海賊のおじさんも、負けず劣らずの策士なのかな…? これで気付いた才蔵が嫉妬して皆が寝てる前で幸村様を…六郎さんでも美味しいよね…っきゃぁぁー! え、つまりはこれって甚幸…いや、根津幸…ううん、違う…甚幸…甚幸…!」
「……ボソボソうるせぇぞ伊佐那海」
「私悪くないよ? 幸村様がエロいのがいけないんだもん!!」
「はぁ?…まぁ、うん…あのオッサンは確かにエロいが…」

伊佐那海が興奮気味に幸村を指差せば、才蔵は「一体何だってんだ」そう呆れながらその指の先を見た。
そうして、直ぐ様状況を理解し、石になる。
「な、な…オッサン…!」
「さ、才蔵、アタシ向こうで寝てくるから! だから幸村様とあんなコトやこんなコトやそんなコト犯ってね?」

伊佐那海の企みに才蔵が深く頷き、幸村が嫌な気配で目覚め、甲板の上で逃げ惑い、泥酔して眠っている六郎はアテにならぬと甚八に助けを求めるまで、あと少し。
さらに仲間を介抱していた筧が甚八に呼ばれて才蔵を正座させて叱るまで、あと少し。
伊佐那海が影で「筧さんはヘタレ攻めと見せかけて、実は……」と妄想に浸っているのは、今現在。




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