3月に読んだ本

野火/大岡昇平

「山の畠の何本かの芋に限られた私の生は、果たして生きるに価するだろうか。しかし死もまた死ぬに値しないとすれば、私はやはり生きねばならぬ。少なくともあの芋のあるところまで、私が歩くのを止めるものはこの世にはない。私には私自身の足取りがよく見えた。」

からの「野の百合」「眼」の変わりよう…。

「妻の心が彼女の全部ではないのも私は知っている。人間がすべて分裂した存在であることを、狂人である私は身をもって知っている。」

第二次世界大戦中、兵士としてフィリピンのレイテ島の前線地帯へ送り込まれた、作者の実体験。

よくある「愛する人のため、愛する家族のため戦場で散った、若者の青春と最期〜(/_;)感動〜(/_;)」的なものでは全くない。
戦場に行けば、こんな目、あるいはこれよりひどい目に遭わされる。それ以外何もない。