マギーが右手をタクシーのドアに挟まれてからもう十日を越えたのに、
手を開いたり閉じたりする時、軽い痛みがまだある。
やっと点筆が握れる様になったけど、人差し指の爪の生え際に違和感がある。
内出血の青痣はもう消えているらしいけど、瘡蓋はまだ付いたまま。
日常生活に支障ないし、マッサージの仕事もできる。
後は日にち薬ね。
それよりも、母がよく言っていた事が身に染みる年頃になった。
靴下は直ぐに脱げるのに、気を付けていてもシャツは裏返しに脱げてしまう。
服のボタンが掛け難く、手先がもどかしいほどに不器用になった。
片足立ちできる時間が短く、家の中でもふらつく。
言葉が直ぐに出て来ない。
ただ、お金の計算だけはひょっとしたら檜よりも早いかも。
やっぱり大阪のおばちゃん?
あ、大阪のおばあちゃんですね。
Skype仲間と宗教論争してから直ぐ、
まず、檜がかなり幅の広い側溝に落ち、
それから六日後、マギーがタクシーのドアに手を挟み、
今月は散々な毎日だった。
恐るべしその宗教! 祟りじゃぁ!!
あ、勿論冗談ですよ。
これまで何十回もその道を通っていたのに、あんな所にあんな溝があったなんて。
目が見えなくて知らなくて、これまで事故に遭わなかったなんて、ラッキーだったね。
檜は右手薬指と小指を切手しまい、通り掛かりの人達に世話になった。
溝から鞄を拾い上げて、泥の付いたそれを入れるエコバッグをくれた女性。
絆創膏を傷口に巻いて、タオルをもくれ、車で目的地まで運んでくれた男性。
「踏切の北側の方ですよね?」
女性はそう言った。
駅で出会った事があるのか、我が家の近くで彼女も買い物したのか。
檜は意外にこの辺りの有名人だったりして。
だから、感じ良く振る舞いましょう。
健常者が気持ち良く手助けしたくなる様な障害者を心掛けましょう。